2021.07.7
司法書士の岡部です。
今日は遺留分のお話です。
長男であるAさんは両親と折り合いが悪く、何十年も交流がないまま両親が亡くなってしまいました。
妹のBさんから両親が亡くなったとの連絡を受け、久しぶりに実家に戻ると遺言書を見つけました。
家庭裁判所の検認手続を経て中身を確認すると、なんと全ての財産(1億円相当)を妹のBさんに相続させると記載されていました。
長男Aさんは遺言どおり、一切の財産を相続できないのでしょうか。
遺留分とは、相続人に認められる最低限の相続分のことです。
ただし、兄弟姉妹が相続人になる場合には遺留分は認められません。
上記の設例では、Aさんにも遺留分が認められるため、全財産を相続することになったBさんに対して一定割合の相続分を請求することができます。
この請求権は、改正前の民法では遺留分減殺請求権というものでしたが、改正されて遺留分侵害額請求権というものに変わりました。
改正前の制度では、相続財産が不動産や株式のみである場合、他の相続人と共有状態となりました。
共有になると、不動産等を処分するにも全員で行わなければならず、特に遺留分減殺請求をするに至るケースは、相続人間で争いがあることが通常ですのでこのような共有状態は好ましくないものでした。
改正後の制度ではこの不都合を回避するため、認められる遺留分について「金銭」で取り戻せることになったのです。
なので遺留分侵害“額”請求権といいます。
遺言で相続から排除されてしまった長男AさんはBさんに対し、遺留分侵害額請求を行うと、BさんはAさんに遺留分である全財産の4分の1(計算方法はその2で)にあたる2500万円を支払う必要が生じます。
結論として、遺言で全く相続できないことになっていたとしても、民法が認める遺留分については金銭での支払いを請求することができます。
ただし、兄弟姉妹が相続人の場合には遺留分は認められないため、例えば両親が既に他界し、配偶者も子供もいない被相続人が、遺言で全財産を盲導犬協会に寄付すると残して亡くなったとします。
この場合、被相続人の弟は遺留分を有しないため、遺留分侵害額請求権を行使することはできません。
今回はかみ砕いて説明しましたが、実際には行使期間の制限があったり、遺留分侵害額の算定方法なども定められています。
遺留分に留意した遺言の作成など、相続についてのお悩みの方は、渋谷・横浜で相続や不動産登記の実績豊富な司法書士法人プレッジまでご相談ください。