2021.08.20
司法書士の金丸です。
株式会社を設立する際、「定款」(ていかん)を作成します。
定款とは、会社の基本情報、運営ルールを記載した書面であり、会社は定款に則って会社の運営を行います。
今回のお話は、定款の記載を利用した会社の相続対策となります。
中小企業では親族が株式を保有することが多いため、株式管理の煩雑を回避したり、円滑な事業承継を図ったりするために、以下のように相続人等に対する株式の売渡請求の制度を定款に設けることができます。
規定例:当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。
このように規定を設けておくことで、会社にとって望ましくない相続人株主の出現を防ぐことができ、経営の安定化を図ることができます。
但し、この規定にもデメリットがあります。
例えばAとBの兄弟で株式を保有しており、Aが会社を経営しているケースで、先にAの方が死亡してしまった場合、BがAの相続人に対して、株式の売渡請求を行使することで、Aが保有していた株式がすべて会社に買い取られてしまって、Bに会社を乗っ取られてしまうという危険性があります。
種類株式とは、会社法108条に規定された9種類の株式のことを言います。
種類株式は、定款に規定することにより株主の権利を拡大したり制限したりすることができ、経済的な面や会社支配の面で多様なニーズに対応することができるので、既存の一般的な定款規定のみでは対応できなかった事業承継の準備や相続の対策にも活用することができます。
例えば、以下のような設定が可能です。
(1)相続対策としては、後継者である長男には議決権のある普通株式を、会社を継がないその他の兄弟には議決権はないが配当優先の種類株式を与えることにより、経営権と財産権を分離して不公平感を無くしていく。
(2)上記の場合で他の兄弟が配当優先株式だけでは不満がある場合は、さらにその兄弟の株を取得請求権付種類株式(株主がその所有している株式を会社に対して買い取るように請求することができる株式)とすることで、金銭他財産に変換できるようにしておく。
(3)逆に、後継者の長男のために、他の兄弟の種類株式を取得条項付種類株式(会社の方から株主に買取を請求できる株式)とすることで、会社主導でその株式を回収できるようにしておく。
(4)事業承継の準備の段階においては、先代が代表権を後継者に継いだ場合でも、まだ後継者が経営者として未熟だと感じる場合には、1株だけ先代が拒否権付株式(黄金株)を所有し、その会社にとって重要な決議をする場合には、先代の所有する種類株式の株主総会の決議も追加で必要とするようにしておく。
このように、早い時期から種類株式を上手に活用することで、将来を見据えた会社経営を行うことが可能となります。
定款規定の新規設定や変更については、会社によって活用方法が異なって参ります。
弊所では、会社法務と事業承継・相続対策を掛け合わせたコンサルティングも承っております。
是非、司法書士法人プレッジまでご相談下さい。