2021.11.5
司法書士の久保です。
2020年から新たに始まった法務局の遺言書保管制度を解説します
遺言書を作成する方法には、手書きによる「自筆遺言書」と、公証役場を利用した「遺言公正証書」という2つの方法が一般的です。
このうちの手書きの「自筆遺言書」を法務局で保管してもらえる、という制度が新たに始まりました。
「全文手書き」が原則の自筆遺言書ですが、法務局の遺言書保管制度を利用する場合には、自宅不動産や金融機関の口座情報などを特定する情報については書類の写しを添付することができます。
例えば不動産を特定する際には、遺言書の中に「別紙1の不動産」と書いたうえで、登記事項証明書の写しを添付するだけでよいことになりました。
法務局保管制度を利用しない自筆遺言書の場合には、自宅不動産を特定しようと思うと、住所とは違うこともある登記の「所在地番」や登記の「家屋番号」などを記載する必要があります。
特に古いマンションだったりすると、記載事項がとても多くなってしまいます。
この記載を省略できると、遺言書を作成する際の負担がだいぶ緩和されるのではないでしょうか。
また、実際に相続手続きをする際にも、書き間違えや特定不足の状況を避けることができるので、手続きがスムーズに進むことなります。
遺言書を法務局で保管してもらうメリットは、記載が楽になるだけではありません。
遺言書を法務局で保管してもらえるので、遺言書が紛失してしまう可能性がなくなります。
遺言書を一度預けた場合でも、遺言書の内容の変更や、保管の取り消しも可能です。
また、法務局保管制度を利用しない場合に必要になる「検認」手続きを省略することができます。
検認制度とは、相続人全員で裁判所に出向き、遺言書を開封したうえで、裁判所の証明書をもらう、という手続きです。
申立手続きの手間や費用もかかりますし、裁判所に行かなければならない負担があります。
しかし、法務局で保管してもらっていた遺言書を相続手続きで使う際には、この検認手続きが不要になるのです。
多くのメリットがある法務局の遺言書保管制度ですが、遺言書を保管してくれるだけで、遺言書の内容自体まではチェックをしてもらえません。
遺言書の内容に不備があったり、分け方に問題があるケースなどについては、助言をもらうことはできないのです。
せっかく作成してあった遺言書が実際には使えない、又は相続トラブルの火種になってしまう、といったケースもあります。
遺言執行者が選任されておらず口座の解約が進まない、遺留分についての配慮がされておらず兄弟で揉めた、というご相談もありました。
もし遺言書作成を検討される場合には、まずは一度プレッジまでご相談ください。
「こんなふうに遺産を分けたい」というご意向を伺いながら、そこで予想される手続きの落とし穴やその解決方法を提案しながら、遺言書の文案作成もお手伝いいたします。